奥谷孝司さんとセミナーと新刊「世界最先端のマーケティング」と
本日は奥谷孝司さんのセミナーに参加してきた。
テーマは、チャネル・デジタルトランスフォーメーション。
だったのだが、私が感じたことを最初に挙げてしまいたい。3つあります。
アプリは魔法の杖ではない。というか、そもそもシンデレラじゃない子をお姫様にはできないということ。もともとのブランドの力がない限りは、アプリほかデジタルツールに手を出しても急成長するはずがない。(余談だけども、Fテレビのディレクターになった知人曰く「女の子は髪型と服装をおしゃれにすれば誰でも美人になれる」)
もう1つは違う業界から参入したほうが画期的なことができる。つまりは、違うビジネスモデルに取り組めないか考えたほうが健全かもしれないということ。(TSUTAYAがポイントビジネスだけではなく、図書館やマンションなど場の運営・空間のコンサルティングをしているのも、その一例だと思う)
さいごの1つはデジタル化して、顧客のデータをとれるようになっても、人の気持ちや理由まではとれないということ。「やらなかった」こともデータでは取りづらいのではないか。(つまりは、すべてがわかる魔法はやっぱり無いってことですね。)
だったのだが、上記はセミナーの主旨と全然違うので、以下、真面目にレビュー。
***
チャネル・デジタルトランスフォーメーションはなかなか進まない。その理由はそれが店舗オペレーションと捉えられているから。例えば、Amazon Goも巷では無人レジが取り上げられがち。だが、無人レジが重要なのではなく、AmazonがECだけではなくリアル店舗での顧客データも取り始めたということに意味がある。Amazon Booksの見方も「これで利益が出るのか?」ではなく、オフラインでも会員を優遇するという価格提案の実験とみる。(ちなみに、Amazon Booksの収益はほぼゼロ(!)と言われているそうです。) つまり、チャネル・デジタルトランスフォーメーションは店舗オペレーション
<事例>
・DIFFERENCE
・ZOZOSUIT
・Warby Parker
・THE MELT
いずれも、店舗に来る前から事前の顧客接点(=アプリでの予約、決済等)があって、店頭では体験が重視されている。デジタル化は、接客の不要化ではなく、高度化。これまで、
(また、余談になるけども。日本の接客は極端だと思う。極端に作業化するか、極端に「お客様は神」になる。ニューヨークで感じたのは、店員のフランクさ。友達のように挨拶もするし、雑談もする。日本でも、上下関係ではないフラットな関係をつくったほうがいいのではないでしょうか?最初は抵抗があるかもしれないが、そのうち慣れると思いますし。そのほうが店員も客も幸せになれそうですし。詳しくは、改めて日記に書きたいと思います。)
顧客時間をどう使うかが重要。店舗に行くことはそもそも楽しかったのか、再考の必要がある。レジ待ちの行列など、面倒でできれば省きたい時間もあったのではないか? 店舗は、物販の場(モノを買う場)から、体験の場、パーソナライズ化へ。
***
以上、セミナーのレビュー。(「真面目にレビュー」と言いつつ、かなり余談が挟まれたが…)
また、セミナーにて一足先にゲットした新刊『世界最先端のマーケティング』についても簡単にレビュー。
・オンラインvsオフラインという対立で考えずに、顧客はどちらも行き来しながら買い物をする。Amazonのような元の軸足がオンラインにある企業は「店舗ありき」という呪縛がない分、チャネルシフト戦略ができる。また、アパレルのようなオフラインでの体験が重要だと考えられていた業界こそ、斬新なチャネルシフトが生まれる可能性がある。
・デジタル化により、顧客は「個客」となって顧客像の把握と、個別提案がしやすくなる。また店舗だけではないメディア、アプリ、商品、SNSなどすべての接点をチャネルだと考えるべき。(背景には顧客にチャネルの主導権の移った、ことがある)そして、一連の体験を最適なものにできる。(余談ですが、この「最適」という言葉は曲者になってますが)
・顧客基点で、顧客体験や顧客時間を設計していくと、待ち時間や在庫スペースといった無駄な時空間も省け、店舗は良い体験の提供に注力できる。
(本当に僭越な言い方ですが)奥谷さんがおっしゃることはその通りなので、考えていなかった方は早くやってください、と思うのですが…
ここでの前提は、ブランドが出来ている企業のことや、「買いたい」と思っている状況下のことが主かと思う。しかし、そもそも「買いたい」とも思っていない人とどう繋がり始めればよいのか?ということも、かなり深刻な問題なわけで。最近、私どもは後者について研究をしております。
結論。
今回のセミナーで最も学んだことは、新刊タイトルの「世界最先端のマーケティング」は編集者の作った釣りワードで、本当のタイトルは横に小さく書いてある「顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略」だった、ということです。